ヲタク彼女
 「……まだ友達にも誰にも言ってないんだけどね。初めて2人でゲーセン行った時に、ヤバいなぁとは思ったんだ。聖二にもあの時聞かれたしね」
 そう言う彼女の顔には落胆の色が見えた。きっと、俺に嫌われたと思ったんだろう。
「何で言わなかったの?」
「だって、みんなヲタクって嫌がるじゃない?特にアニヲタは……。聖二には嫌われたくなかったし……」
 確かに俺は、心のどこかでヲタクを白い目で見ているところがあった。でも、今こうして彼女にヲタクを告白されて、ちっとも嫌だとは思わなかった。むしろ、今までどうしてそこにこだわっていたのか不思議なくらいだ。
「嫌いにはならないよ」
 俺がそう言うと、彼女の顔がパァッと明るくなった。
「本当に!?」
「ああ」
 すると、彼女がいきなり泣き出した。
「ちょっ、どうしたの!?」
「なんだか安心して……。本当に良かった」
「……帰ろっか」
 そう言って手を差し出すと、彼女はうんと素直に俺の手をとった。
 もう、薄暗くなったいつもの帰り道を、2人で手をつないで帰った。
「じゃあ、これからは沢山そういう話していいんだね」
「え……」
 本当に良かったのだろうか……。
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