ヲタク彼女
 「聖二と祐二って知り合いなの?」
 彼女のいきなりの質問に、俺は一瞬怯んだ。まして、祐二のことだ。どう答えたらいいのか……。
「知り合いっていうか……」
「幼なじみだよ」
 俺が答えようとした時、先に誰かが言った。この声は……
「祐二」
 やっぱり。
「……ああ」
 俺は祐二と目が合わせられなかった。
「小学校から一緒だ」
 そうだ。俺たちは幼なじみだ。俺たちはいつも、何するにも一緒だった。中3までは……。
「じゃあ、仲いいんじゃないの?なんであんな事言ったの?」
「あんな事……?」
「うん。祐二に、聖二とは別れた方がいいって」
「……祐二」
「こいつは裏切り者だ」
 祐二が静かに言った。でも、その目には確実に怒りがあった。
 今の俺なら、祐二に別れろと言われたら別れるかもしれない。それくらい祐二には悪いと思っている。
「……悪かった」
 自然と口から出ていた。
「……悪かっただと……?あの試合がどれだけ大事な試合だったか、お前だってわかってただろ!!」
 祐二が俺の胸ぐらを掴んだ。
「お前がどれだけ大事なポジションにいたのかわかってただろ!!お前が抜けるだけで、あのチームがどれだけ弱くなるか知ってただろ!!お前はその試合直前で辞めたんだ!お前のせいでうちのチームは負けたんだ」
 祐二が俺にまくし立てた。
 俺は何も言い返せなかった。
「祐二、違うんだよ」
「……牧」
 ――牧!?
「ごめん。祐二の声が聞こえてきたからもしかしたらと思って……」
「何が違うんだよ」
 いつも牧には優しい祐二が、牧を睨みつけた。
「……聖二、試合の直前で――」
「牧!」
 俺は牧が言うのを遮った。
「……悪かった、祐二」
 俺は祐二の手を払いのけて、牧と朱音ちゃんを連れて、祐二の前を去った。
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