ヲタク彼女
 「祐二!」
 返事はない。
「祐二!!」
 俺は強く握られていた腕をようやく振り払った。そうすると、やっと祐二が止まった。
「何なんだよ!」
「……のこと」
「えっ」
 俺は祐二の言葉がよく聞き取れなくて、少し苛つきながら聞き返した。
「この間牧が言いかけたこと、何なんだよ!」
「……別に何でもねえよ」
 もう過ぎたことだと俺は思っている。だから今更祐二にも言い訳まがいのことを言う気はなかった。
「何でもねえわけねえだろ!!牧が俺にいいかけたんだから!」
「……」
 俺は何も答えなかった。というより、何も言えなかった。
「……頼むよ、聖二……」
 俺は祐二のその声に驚いた。今までに聞いたこともないほど弱々しい声だった。
「何でそこまで……」
「……戻りたいんだ」
「……えっ」
 想像もしなかった言葉だった。
「また昔みたいに3人でツルみたいっておもってた。でも、お前から何も聞かないまま許すことは出来ないと思ったんだ」
「……祐二」
 全部話そう。今まで微塵も思ったことなどなかったのに、祐二のその言葉を聞いて、そう思った。絶対に話さないと決めていたのに、今は全部話してしまおうと思えた。
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