ヲタク彼女
「必ず返せよー」
「はい。失礼します」
10何本という傘の数は思っていたより多かった。おかげで、両手は塞がるわ視界は悪いわ。とにかく歩きにくい。
「ったく、誰か手伝えってんだ」
「手伝おっか?」
突然聞こえた声に一瞬、本物が出たかと本気でビビった。が聞き慣れたその声に、俺はホッとした。
「朱音ちゃん……」
「貸して」
2人で話すのは久々すぎて、話題が全く見つからなかった。
「あたし」
しばらく無言のまま歩いていると、いきなり彼女が口を開いた。
「あたし、ヲタクだから人に言えないこといっぱいあるし、鈍いからいっつもみんなに怒られるの」
彼女が何を言いたいのか全くわからなかった。
「でも、聖二はヲタクだって言っても離れなかったし……聖二が別れた理由言いたくないなら聞かないけど……」
「朱音ちゃん?」
「あたし、聖二と別れてからアニメも見てないし、漫画も読んでないし……」
「ちょっ、ちょっと!」
朱音ちゃんが止まらない。
「あたしはまだ聖二が好きなの!」
「……」
その瞬間、俺は彼女にすごく申し訳ないことをしたんだと罪悪感がわいてきた。いや、それはあの時からあったのだが、あの時は、彼女ならすぐに新しい人ができるとも思ってた。
「……違うんだ。朱音ちゃんがヲタクなのが嫌なんじゃない。むしろそういうとこも鈍感なとこも天然なとこも、全部ひっくるめて好きだよ。今も」
今まで言わなかったのは、ただカッコ悪いと思ったから。今考えると、なんて下らない理由なんだと思う。
「ただ、耐えられなかったんだ。君が他の男と喋るだけで嫌で。男のくせに嫉妬なんてって思うかもしれないけど、その嫉妬と独占欲で自分が汚くなっていくのがわかるんだ。こんなに汚くなった自分が近くにいたらダメだと思った。だから別れた」
彼女が今も俺を好きだと言ってくれて、正直に嬉しかった。でもそこで戻ったら、きっと俺はまた同じになるだろう。
「なんだ」
彼女が横で嬉しそうな声で言った。
「自分の好きな人が嫉妬してくれるのって、あたし、すごく幸せだと思わない?」
忘れてた。彼女はこういう人だった。
「好きです。あたしと付き合ってください」
「はい。失礼します」
10何本という傘の数は思っていたより多かった。おかげで、両手は塞がるわ視界は悪いわ。とにかく歩きにくい。
「ったく、誰か手伝えってんだ」
「手伝おっか?」
突然聞こえた声に一瞬、本物が出たかと本気でビビった。が聞き慣れたその声に、俺はホッとした。
「朱音ちゃん……」
「貸して」
2人で話すのは久々すぎて、話題が全く見つからなかった。
「あたし」
しばらく無言のまま歩いていると、いきなり彼女が口を開いた。
「あたし、ヲタクだから人に言えないこといっぱいあるし、鈍いからいっつもみんなに怒られるの」
彼女が何を言いたいのか全くわからなかった。
「でも、聖二はヲタクだって言っても離れなかったし……聖二が別れた理由言いたくないなら聞かないけど……」
「朱音ちゃん?」
「あたし、聖二と別れてからアニメも見てないし、漫画も読んでないし……」
「ちょっ、ちょっと!」
朱音ちゃんが止まらない。
「あたしはまだ聖二が好きなの!」
「……」
その瞬間、俺は彼女にすごく申し訳ないことをしたんだと罪悪感がわいてきた。いや、それはあの時からあったのだが、あの時は、彼女ならすぐに新しい人ができるとも思ってた。
「……違うんだ。朱音ちゃんがヲタクなのが嫌なんじゃない。むしろそういうとこも鈍感なとこも天然なとこも、全部ひっくるめて好きだよ。今も」
今まで言わなかったのは、ただカッコ悪いと思ったから。今考えると、なんて下らない理由なんだと思う。
「ただ、耐えられなかったんだ。君が他の男と喋るだけで嫌で。男のくせに嫉妬なんてって思うかもしれないけど、その嫉妬と独占欲で自分が汚くなっていくのがわかるんだ。こんなに汚くなった自分が近くにいたらダメだと思った。だから別れた」
彼女が今も俺を好きだと言ってくれて、正直に嬉しかった。でもそこで戻ったら、きっと俺はまた同じになるだろう。
「なんだ」
彼女が横で嬉しそうな声で言った。
「自分の好きな人が嫉妬してくれるのって、あたし、すごく幸せだと思わない?」
忘れてた。彼女はこういう人だった。
「好きです。あたしと付き合ってください」