もっと…

素直になれないのが恋ってもの

私はどれくらい眠っていたのだろう。



目が覚めると、辺りは暗くなっていた。




そろそろ帰らないと…。ずっと眠っていたからか、お腹の痛みはすっかり無くなっていた。



ベッドから出て、カーテンを躊躇する事なく簡単に開けた。





「に、新妻先生…っ!」



「よっ。もうお腹は大丈夫なのか?」



「え…?何でその事……」



「渡辺先生に聞いたんだ。で、渡辺先生午後から出張でさ、俺に頼んできたんだ。梓の事頼むって」



ふーん。なるほど…。


…てゆーか、何でよりによって新妻先生に頼むのよ…。


あんまり会いたくなかったのに…。




「さて、帰るぞ!梓」



はぁっ!?


新妻先生は梓のバッグを肩手に、もう片方の手は車のキーを梓に見せている。



送ってくれるって事?



「梓早く♪」



新妻先生は梓の手をとった。



……イヤ…ッ。



「離してっ…!!」



梓は自ら手を振り払うと、新妻先生から自分のバッグを奪い取った。



「梓…?」



突然の事に目を丸くさせている新妻先生。


だから…そんなに優しく名前を呼ばないでよ…っ。



「私一人で帰ります。先生の手は借りたくない…っ」



「急にどうした。今日なんか変だぞ?」



新妻先生は梓の身長に合わせ、肩に触れようとするが…



「触らないで…っ!!」


パシンッと大きな音を響かせ、新妻先生の手を叩いた。


涙を堪えながら、真っ赤な目で新妻先生を睨む。



「わりぃ…っ。でも、もう真っ暗だし。何かあってからじゃ困るだろ…?」



「………」



梓は、新妻先生の心配に気付き、送って貰おうかとおもったが……




さっき加藤さんとキスしてた事を思いだし、……何だか腹がたってきた。



梓は何も言わず保健室を出た。追いかけようと思ったが、これ以上何か言ったら、本当に嫌われてしまいそうで……



新妻先生は追いかける事が出来なかった。






先生…っ。

私本当は先生の事……好きだよ?


だけど、これ以上先生と関わったら諦められなくなっちゃう……っ。


さっきだって本当は送って欲しかったけど、何か素直になれなくて…。





先生を好きになるのは許されない事。そんなの分かってるけど…



心で想っているだけなら良いよね?


だから、







もう少し…好きでいさせて下さい……。
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