隣に魔王さん。


ふと、ページを捲る手が止まる。


もしかして、コレは。


―――実際に起こったことではないのか、



現実味のあるお話。
少女の話し方や仕草、文化に対する考え方は日本のそのものと似ている。
同じ、とはいえないけれど似ているの。






―――「”悲しみは、空から降る。”」


雨の中、雨宿りをしていた少女とその仲間のひとり。
少女と最も近しい存在だろう。


ぽつりと呟いた言葉に彼は怪訝な顔を見せた。


「何でだよ。」


少女は哀しげに笑ってただ、雨をみていた。
暫くして、少女はこう、言ったのだ。


「”泣いてても、気づかないでしょ?”」


彼ははっとして少女をみた。


「……じゃあ、俺が気づいてやる。」

「え?」

「お前が泣いてたら、俺が気づいてやる。」


ゆっくりと少女を抱きしめる。
その、温かな温もりに少女は静かに涙を流した。





「空、か…」


ぽつりと呟いた言葉に深い意味はない。
ただ、少女の言った意味に少しだけ共感を覚える。








< 106 / 127 >

この作品をシェア

pagetop