隣に魔王さん。


―――ただ、悲しかった。
あなたと別れることが、


だから、縋ったの。


なのに―――



あなたはなんて言って私を突き放したの?


「お前の居場所は此処じゃないだろ?」


善意、で言ってくれたのかもしれない。
けど、私には翼をもがれた気がしたの。


あなたの隣にいるための翼を。


なら、私はここを去るしか路は無いの。



あの日、同じような雨の中。
私は自らの翼を絶とうとしたの。


「さよなら」


そう、微笑んであなたの元から去ろうと走り出す。
後ろで私を呼ぶ声がするけどもう、止まれない。


―――止まれないの。



バシャバシャと走る度に水が跳ねて足元を濡らす。
でも、気にしてなんかいられない。


髪から滴り落ちる雫も、凍えるような吐息も、
悴んだ指先も、震える唇も、


全部、一度は捨てたはずなの。
”生きる”ということを捨てたはずなのに。



もう一度、”生きてみよう”と笑ったはずなのに。



前を向いたあの時の景色さえも思い浮かべることができない。



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