隣に魔王さん。


暫くして、涙が枯れかかってきた頃魔王さんは私を椅子に座らせて水を取りに行った。


「で、落ち着いたか?」


喉がカラカラで返事も出来ないためにコクン、と頷く。
その返事に満足したのか笑みを向けてよしよしと頭を撫でる。



何となく、嬉しくて目を細めてそれを受け入れる。



魔王さんは向かいにある椅子を私の目の前に持ってきて座った。
ハテナを浮かべた私に微笑んで、


「何で泣いてたんだ?」


――わからない、ただそれが応え。


ただ、ただ、哀しかったの。
不意に痛んだ頭に手を当てると何かと被った気がした。
それは、一瞬で何をする暇もなかったのだけれど。


「ねぇ、まおーさん?」


小さな小さな声で疑問を口にしようとする私をしっかと見て魔王さんはなんだ、と目で問う。


意を決して口を開き空気を音に変えようとした―――――瞬間、ただの溜め息として吐き出されていく。


「………っ、ごめんなさい。」

「………なんかあったのか。……なつか?」


くい、と俯く私の顎をとり無理矢理上を向かせる。絡まる魔王さんと私の視線は何かの焔を灯していて熱い。
ただ、魔王さんのそれには私を見て哀しげに揺れるモノもあるのだけど。


「っ、う、ううん。何でもないです。ごめんなさい。」


いつもと、同じように笑えてるつもりだけど、魔王さんは見透かすような澄んだ瞳を私に向ける。



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