隣に魔王さん。
■ⅩⅠ. 花嫁候補ご到着です。
ニナが申し訳なさそうに私を見ているのがわかる。
ニナのせいじゃないのにね。
そっと窓に手をかけると下に見える光景に自分でも苦笑いを漏らす。
「仕方がないよ……」
魔王さんが忙しくなって、私もあまり会いに行かなくなってそのまま花嫁候補が城にくることになった。
その前に、少しだけ話す機会があったのだけど何故か魔王さんは私を見て辛そう笑った。
一言だけ、ごめん。と言って終わった。
それから、間もなくしてきらびらかに着飾ったご令嬢が来てそのなかにはあの爆乳の人もいる。
魔王さんがそんな人たちに靡くわけがない。
勝手にそう思って、今日みたいな光景を見て胸が苦しくなる、そんな無限ループ。
「……こうくん」
不意に貴方の名を呼ぶ。
___ねぇ会いたい、
無意識にポトリと涙が零れ落ちて、頬が濡れる。視界が滲んでぼやけるのに、声も嗚咽も喉にくぐもってなにも出ない。
___会いたい、今すぐに。
わかってる、わかってる。
自分が逃げようとしていること。
魔王さんから目を逸らして私を好きだと言ってくれたコウくんに逃げようとしている。
窓の外、魔王さんがこちらを見ているのに気づいて切なくなる。
目が合えば此方からは逸らせないのを知っていても抗えない。
だから、
静かにカーテンを閉めた。