隣に魔王さん。
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「……こうくん」
なつかさまは切なげに息をもらすような小さな小さな声で私の知らない名を口にしたのです。
陛下と以前のように会えなくなってからなつかさまは引きこもるようにして部屋に閉じこもっていらっしゃる。
相も変わらず、剣を教えに行かれているのですが前よりもお早いお帰りでした。
私たちが心配しているのを知ってか、なつかさまは健気に笑ってくださる。
けれど、以前のように太陽のような輝く笑顔ではなくどこか寂しげな月のように静かに笑うのです。
__きっと、陛下に会えないからだわっ!
アヌたちが嬉々として話していたのを私はぼんやりと聞いていた。
……違う、なつかさまの杞憂はそんなものではない。
不意に見せる、年らしからぬ横顔に違和感を覚えて。
皆が眠りについてからよくテラスにでられているのを私は知っています。
なつかさまのお部屋が目と鼻の先なのは専属だからというだけではなく護衛、というニュアンスも含まれるからなのです。
果たして、それが必要なのかなんて問われても私には推し量れるものではないのですが。
多分ではあるが苦しげに想われる人がいるのだろう、時折昼寝時に魘されているのです。