隣に魔王さん。
・*・
「……ふぅー、あ。エリダさん。貴方は流石に紛れられると面倒なので後にしてくれますか?」
援軍が援軍を呼び、合計で百人くらいいるだろう兵士をまるで風を斬っていくように軽い剣裁きでヒラリヒラリと舞うように剣を振る黒髪の少女。
思わず、見とれていたら。
少女はこちらを見てニコリ、と花が綻ぶような笑みで私に笑いかけた。
彼女だけ見ていたらほぅ、となるのだが彼女の足元には気を失っている兵士がゴロゴロと転がっている。
「………やめて、くれぬか?」
コチラを振り向く動作で目の前にいた兵士の首筋に手刀を叩き込んだ年端もいかぬ少女。
「どーしました?」
どさり、と彼女が応えたと同時に倒れる音がした。
ふぅー、と隠れるように溜め息をつく。
「もう、少女の剣を受けれるものはおらん。だから無礼を許して、それらを鍛えてくれぬか。」
少女は剣をおき、私に跪く形をとると瞳を輝かせて、いままでて一番大人びた笑みを浮かべ、
「おまかせを、」
自らの位置を築いたのだ。
まだ年端もいかぬ少女が兵士たちにとっての師になる位置に。
―――この少女が魔王様が興味を示していると知ったのはもう少し後のコトだった。