隣に魔王さん。
カチャリ、無機質な音で扉が開いた。
ニナが何も言わずドレスを脱ぐ私を手伝う。
明らかに気落ちしている、とわかっている。
でも、だからといって笑顔で偽ろうとは思わなかった。
化粧も落として、浴室の扉を開けて温かな湯気のたっている浴槽にゆっくりとつかる。
そして、額に触ると嗚咽が漏れた。涙が音もたてず頬を伝う。
――ごめんね、守れなかった。
――貴方が私に残してくれた唯一の、“温かさ”がきえちゃった。
「……すき、っすきだよ……っ、」
すきなの。
誰よりも、何よりも、
ただ、すきなの。
浴槽の中で、私は静かに泣いた。