隣に魔王さん。


―――コンコン、


扉がノックされる音が部屋に響いてふっと我に変える。


あぁ、まただ。



こっちに来てから、思い出すことが多くなった。
違う、想い出に浸ることが多くなったのだ。
あのひと、を忘れることなんて出来ないのに。


「なつか、入るぞ」


もうすでに聞きなれてしまった声。
キィ、と音をたてて開いた扉から魔王さんが入ってくる。


「あ、おはよーございまーす………」


ソファーに寝転びながらヒラヒラと手をふる。


「お前は、またそんなとこで……」


はぁ、と呆れ気味につかれた溜め息に少しだけ反論する。


「だって、暇なんだもんっ。魔王さんが許可出してくれないからー」

「出たら、めんどくさいのがいるからって言ったろ。」

「じゃ、魔王さんが守ってよぅ、」


むう、と膨れる私に苦笑いを返してソファーに寝転ぶ私を抱き上げる。
最近、よく部屋に来るようになった魔王さんはよく、私を抱き上げる。


慣れてきたの。


魔王さんの香りに、


抱き締めてくれるあの腕に、



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