隣に魔王さん。


ひらり、とワンピースが揺れる。

今日は白地に下の方に茶色の刺繍が入ってる膝丈のワンピースですっ。生地が何とも言えないくらいスベスベして気持ちいーのです。

「魔王さん、」


高い高い、とされてるカッコなので魔王さんを見下ろす私は魔王さんに手を伸ばす。


「ギュッてして、」


一瞬、驚いてから柔らかに微笑んでゆっくりと抱き締めてくれる。肩にのせられるカタチだけどまぁいいや。


今は、触れていたいの。
寂しいから、



利用、してるっていうのかな。
こういうのを、



魔王さんの優しさを。


「今日はやけに大人しいな。」


喉で笑う魔王さん。


「だって、暇なんですもん。」

「答えになってないぞ。」


わかってるよ、その意味くらい。

「魔王さん、」

「なんだ、」

「………呼んでみただけです。」

「なんだ、それは。」


私を持ち上げたまま抱き締めて笑う。
ちっこいけど、それなりに体重はあるし、だからいっつも思う。


「私、重いですよ?」

「そうか?」

「……ムリ、してません?」


びっみょーに引け腰になる。



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