隣に魔王さん。
・*・
「見てない、と思っても見てるものなのだな。」
「ふふ、音でわかりますよ。」
「音?」
彼女はいつもと変わらない穏やかな笑顔で話す。
「えぇ、音です。まぁ、音をたてずに軽いステップをする人も多々います、私もそうですが。でも、彼は軽く動けませんし、あの体格からして小回りを使って、なんて使わないでしょう。だから、踏み込むとき、足音が大きくなるんですよ。」
――ほら、その証拠に、
彼女が指差した方を見れば、さっきの騎士が踏み込みを意識していた。
そして、彼女が言った通り音が大きく響いたのだ。
「……すごいな。」
彼女は笑みを浮かべて、張りのある鋭い指示を出した。
「二刻休憩。そのあとは試合形式でやる、以上!」
二刻………?
彼女にしては長い休憩だ。
不思議に思って彼女を見ると薄着になって体操をしていた。
私の視線に気付いたのだろう彼女は照れくさそうに笑って
「そろそろ、本気を出さないと。」
軽く体を動かしはじめた。
っていうことは、と考えはじめてやめた。
彼女の強さは規格外なのだ。