隣に魔王さん。
「あーぁ、ほら、次は?」
言うな否や、次々と木刀を振り上げる。
「……そう、じゃないと。」
――少しだけ、本気を見せようか。
そして、自ら前に走り出す。
虚をつかれたような顔をする騎士を思いっきり蹴り倒す。
着地と同時に木刀を横に斬りかかって、独りの横っ面を殴る。
ニヤリ、と口角が上がるのがわかる。
どうしようもない、快楽が体を駆け巡る。
気づけば、辺りに騎士が転がっていて最後の1人が襲いかかってくる。
私は、それを………
―――バキッ
一振り、でなぎ倒した。
息も上がらない。
空虚感がジワジワと心を支配する。
「……馬鹿、みたい。」
自分の呟きにすら、泣きたくなる。ジワ、と浮かんだ涙にも気づかないフリをして。
「………なつか、殿?」
エリダさんが私の名前を呼ぶ。
それにすら、弱い笑みで応えてしまう。
「もう使い物にならなくっちゃいましたね。」
「いえ、まだまだっていうことなのだから、いいだろう。」
エリダさんと少し、話していたら聞き慣れたあの私を呼ぶ声が聞こえた。
「―――なつか。」