隣に魔王さん。
物珍しげに辺りを見回していたらいつの間にやら書類の山を片付けていた魔王さんが私の隣に立っていた。
「ぅわっ!!びっくりしたー。驚かせないでくださいよぅ。」
「あぁ、悪い。」
ん、と思った。
魔王さんの様子が可笑しい。
なんか、なんだろー、眠そう?
「魔王さん、眠いんですかー?」
「ん、まぁな。寝てはいるんだけどな」
疲れたように笑う魔王さんをぐいぐいと引っ張る。
魔王さんは何か言い掛けて力無く笑ったまま私にされるがまま。
たぶん、こっちかなー。
あやふやな推測が当たり、小さな扉を開けたその先には私のベッドよりも大きいふかふかそうなベッドがありました。
………寝てみたい。
「あ、ちょっと!」
ふらふらとベッドに向かう魔王さんを慌てて引き止めて上着を脱がせる。
シワになるんだよー、こういうのはー。
辺りにハンガーが無かったから一旦寝室を出てソファーに掛けて、エルさんに書き置き………しようとしたけど私未だにこちらの文字が書けないのです。
えぇ、聞き取りと読み取りは出来るんだけど何度練習しても拙くて読めやしない。
うーむ、と悩んでいるところにコンコン、とノックがされて返事をするとエルさんが入ってきて微笑む。
「なつかさま、こんにちわ。」
「こんにちわですっ。」
元気よく挨拶するとまるで妹を見るかのように細められる瞳。
「あ、魔王さんは今から仮眠しますけど……」
「わかりました。午後は特に仕事も予定も無いのでゆっくりしてください。陛下をお願いしますね。」