姫の笑顔は俺のもの
息が止まりそうになった
それぐらい、ショックは大きかった
血のつながった親に、そんなことを言われるのは
・・・いくら幼いといったって、どんなに酷いことを言われているのか悟った

でも、不思議と涙は出なかった
悲しさで、涙さえ出なかったのかは分からない
ただ、出なかったことだけ覚えてる

「あんたが居なかったら・・・!あんたのせいで私の人生めちゃくちゃよ!どうしてくれるのよ」

「・・・」

「もう、生きてくのに疲れたわ」

肩を掴んでいた手を離して、フラフラと立ち上がりベランダまで歩いていく
その足取りはかなり危ういものだ

「お、かあ・・・さん?」

そう呼びかけても、振り返ることはない
まるで、聞こえていないかのように

そしてそのまま、ベランダから飛び降りた
・・・本当に自然に

アタシ達が住んでいたのは、マンションの5階
かなりの高さがある
下はコンクリート
・・・落ちたら、命はない

そんなところから、母は飛び降りた





―――――案の定、即死だった






これが、アタシに対しての一番最初の裏切り
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