メルラバ
「………」

仕方なく助手席に乗り込みドアを閉めると、秋は無言のままで車を発進させた。


どっしりとした【Cherokee】は音もなく進み、私と秋と、そして沈黙を乗せて静かに滑走を続ける。

話すことも、秋にかける言葉も見当たらず、ただ窓の外を眺めた。

流れる景色はまるでコマ送りの映画のようで、夏の風景にはノスタルジーが宿っている。

目的地を知らない私と【Cherokee】はただ黙っていることしか出来なくて、ほんの少し秋を憎らしく思う。


赤信号で車は緩やかに減速し、相変わらずの沈黙の上で、ウィンカーだけがカチカチと音を刻んでいる。
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