メルラバ
「……もぅ、ちょっと」
「ん、なんて?」

秋が身を屈めて、私の口元に耳を寄せる。

もうちょっと一緒にいたい。

そう告げた私に秋は嬉しそうに笑って、私の右手をとった。

「ほな、もう一周。散歩しよ」

私のわがままを快く聞き入れてくれる秋がだいすきだ。

手を繋いで時間を惜しむように、ゆっくりと。

なんの変哲もないただの道を、ただただ歩く。
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