メルラバ

やまない雨を恨めしく思いつつ、私はそのシャワーの下に飛び出した。


走ったりしない。
バカみたいだもの。


さっきはあんなにきれいに見えた桜の花が、今は巨大なピンク色のお化けに見える。

空はどんより曇って、雲が少しづつ動いて、水色を灰色に変えようと躍起になっている。

空から落っこちてくる雨粒が、私の髪を濡らし、つーっと頬を滑り落ちた。


泣いてるんじゃない。
これは涙なんかじゃない。

ふわりふわりと風に揺れるはずのワンピースが、雨の湿気で静電気を起こし、私の足にまとわりつく。

「最悪…」

そう呟いて空を見上げたら、雨の粒が私の目を直撃して…

生温い涙に変わった。