ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
「―――なっ!?……………愁、様…」
しばらくすると、雛さんの声がした。それは、さっきまでの声とは違う悲しい声で。
(愁のこと、本気で好きなんだ)
第三者が見たら、きっと私よりは彼女の方が愁にふさわしいのだろう。
何より私は愁とは違う、人間なんだから。
…そう考えて揺らぐときがあっても、愁に触れて愁の言葉を聞いてしまえば不安や焦りはどこかへ形を潜めてしまう。
どうしたらいい?
どうしたらいいんだろう。
この場から去っていく雛さんの背中を見つめながら、私は自分のこれからを考えてしまい唇をかみしめる。
そうやって考え込む私のことを黙って抱きしめたままでいる愁もまた、今回に限っては何も言ってはくれなかった。