ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
あれから数日が経った。
雛さんとの一件以来考え込むことが多くなった私に気づいた愁は、あまり私のそばに寄ってくることをしなかった。
…もっとも、愁が来ても上の空でいる私が悪いんだけど。
愁は愁で忙しいらしく、朝早くに屋敷を出て夜遅くに帰ってくることが多くなって、昨日から同じ屋敷に住んでいるのに顔を合わせていなかった。
(…会いたい、な)
どこからか笛の音が聞こえてくる中、私は縁側の柱にもたれ掛かって沈みつつある夕日を眺めていた。
そっとまぶたを閉じて、まぶたの裏に焼き付く愁の姿を探す。
次にまぶたを開けたら愁がそこにいればいいのに、とか都合のいいことを考えてしまう。