ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
(…たいがい私もロマンチストよね)
そう思いながらゆっくりまぶたを開ける。
「―――お、眠っていたかと思うたら起きておったのな」
「し、愁!?」
予想通りというべきか予想外というべきか、私の目の前には愁がいた。
いつもは濃紺の着流し姿なのに今日は紫色の布地に銀糸で刺繍の施された見るからに高価そうな着流しを着ていて、髪も綺麗にまとめてある。
「今から里の祭りがある故、ぬしも連れて行くぞ」
愁がそう言った瞬間に私が着ていた服が赤紫色の着物に変わった。
驚く私にしてやったりといった表情で笑う愁に、私は精一杯笑顔を見せるのだった。