ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-





そう言えば、屋敷の外に出かけるのは初めてだっけ。


そう思いながら愁と二人、祭りが行われる神社までの道を歩いていると、おもむろに愁が口を開いた。






「ぬしのことよ、大方悩んでいたのだろう?」


いつの間にか私の手を取り、前を向いたまま愁はそう言った。



「………そりゃあね。私なんかでいいのかって、誰だって悩むと思うよ?」


「そうよな。…まぁよい、今は祭りを楽しめばよいからな」


そう言うと愁は一層私の手を強く握りしめる。
その手が妙に汗ばんでいたことが気にはなったけど、私は久しぶりの愁の感触に泣きそうになっていて何も言わなかった。





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