ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-





「―――わぁ、出店たくさん出てるね!」


食べ物の屋台に、射的や金魚すくい。
人間界とそう変わらない祭りの風景にはしゃぎだした私を見て愁はぎこちなく笑った。



「…あれ、愁どうしたの?」


「いや、なにもない」


そうは言うけどどこか落ち着かない様子の愁。


(…具合でも悪いのかな)


何度聞いてもかたくなに隠すその理由を、私はすぐ思い知らされることになってしまった。










「そのような瞳をしながら、よくもまぁこのような場所に来れたものだ。愁様より梗様のほうが次期頭領にふさわしいではないか!」





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