ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-

愁は何度も思ったはずなんだ。




―――もし、黄金色の瞳を持って生まれていたら。


後ろめたい気持ちを持たずにすんだ。母親を死なせなくてすんだ。半分だけ血のつながった弟と、争うこともなかった。


それでも、一度は逃げたこの里に戻ってきたのは私のためだけじゃない。
自分自身のためと、この里のためなんだから。






「…私のことを悪く言うなら、いい。だけど、っ――…」


だめだ、泣いちゃ負けだ。
そう思えば思うほど涙は溢れて今にもこぼれ落ちてしまいそう。


そんな私の瞳を覆うのは、いつだって優しいあの手だった。