ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
「泣く奴があるか、ぬしは誠阿呆よ」
目には見えないけど笑っているような声色の愁に、私はへへっと返した。
「………さて、ぬしら。先程の野次、我を目の前にして言うてみよ」
次に聞こえたのはぞっとするくらいの冷たい声。
威圧感たっぷりのその口調に、奴らも周りの人々もなにも言えなくなっていた。
「―――愁様!祭りのじゃまものやっつけてよ!」
すると、この静寂を割って子供たちがそう騒ぎ出す。
気づけば私たちの周りを祭りに来ていた子供たちが囲んでいて、あの一団をにらみつけているではないか。