ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
お祭りの間、私と愁の周りには常に誰かがやってきて話しかけたり屋台で買ったものをくれたりしてくれた。
最初は戸惑っていた愁も、次第に皆に打ち解けていく。
愁のそばにいる私の周りにも子供たちがわらわらと群がってきて、私に抱っこをせがんできた。
そんな子たちに囲まれて、屋台巡りをして愁のそばに戻ってきたときだった。
………愁の笑顔があった。
あの青紫の瞳が、しっかりと相手を見て笑う。
「あれ〜、泣いてるの…?」
そう言いだした子供たちに向けて私は唇に人差し指を当てた。
すると子供たちは頷いて、今度は愁に向かって走っていくのだった。