ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
人間の女なぞに欲情せぬわ、とせせら笑って寝室をあとにする彼に朝から苛立ちながら私は着替え、台所に向かった。
まずは、と冷蔵庫を見てもほとんど食材が残ってない。
(………買い物行かなきゃな。て、あれ?)
私はリビングから外を眺めている彼の姿を見る。
…そういや昨日お風呂入れてないし、あのまま寝たわけ?
「ちょっと!」
「なんぞ。我は今忙しい」
「どこがよ!…ってあなた、昨日からそのままよね!?今着替え貸すからお風呂入ってきて。そして今更だけど名前は?」
私が矢継ぎ早にそう話しかけると、彼はようやくこちらを向いた。