ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
「………さぁ、菜々美。我の瞳を見よ」
しばらくして隙間なく重ねていた唇が離れると私の目の前にある愁の、青紫の瞳が淡く光り出した。
「これから我がぬしの中に精を吐き出すまでの間、我の瞳から目をそらすな。…そう長い時間はかからぬ、我にも限度がある故な」
「わかっ、…―――んぁぁっ!」
私が返事をする前に、愁は再び動き始めた。
激しい動きに意識が飛びそうになりながら、それでも私は愁の瞳から目をそらさないよう気を配る。
―――喰われてる、そう思った。
舌なめずりをして私を見下ろす愁の姿は本物の獣のよう。
それでも、そんな愁に心も身体も食べられて幸せだと思う私。…きっともうとっくに、私は愁に食べ尽くされていたんだ。