ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-





「我が洗ってやる故」


「なっ、じ、じじ自分でできます!ねぇ、愁ったら!」




―――お風呂場にて。
私の主張を無視した愁は邪魔にならないよう髪を結い着流しをたくし上げると、石鹸を泡立てながら私に近づいてくる。


ある意味昨夜の出来事よりも恥ずかしいためやめてほしかったけど、確かに身体に思うように力が入らない。



「ほらな。…転成してしばらくは身体の自由もきかぬのよ。回復するまで我が世話をする故、ゆるりとするがよい」


私の腕を洗いながらそう言って笑う愁は心から楽しそうに笑っていて、ならそれでもいいか、と思うことにした私は大人しくしていることにした。
…というより、インフルエンザにでもかかったかのような身体の痛みの理由がわかってほっとして気が抜けたってのもあるけど、ね。





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