ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
愁と二人きり、お風呂場になんていたらまたいつぞやのように襲われるんじゃないかと思ってしばらく私は警戒していた。
でも、愁は思った以上にてきぱきと私の全身を洗い上げ、私を湯船に移動させると湯船の縁に座って私を見つめている。
(拍子抜け…)
「―――なんか愁、変」
「そうか?我はなにも変わらぬぞ。………まぁ、強いて言えばな。我はぬしを娶れて喜んでおるのよ」
そう言うと愁は私のすぐ後ろに跪き、私をそっと抱きしめる。そのまま首筋に舌を這わせながらそっとこうつぶやくのだった。
「菜々美、我の妻。…我のすべてよ」
二人きりのお風呂場に響く愁の心地いい声。
舌の感触も、そのあとの唇の感触も全部全部私を溶かしてしまいそうなくらい甘かった。