ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
―――このときの私は年齢よりもある意味でもっと大事な、物騒なワードに気づかなかった。
“幽閉”。
愁はそう確かに言ったんだ。
そこに至るまで何があったのか、今どうしてここにいるのか、疑問は尽きない。
でも、聞けない。
だって、愁はショッピングモールの中を本当に楽しそうに歩いている。
普段はすました顔をしているのに今は子供のように青紫の瞳を輝かせて、本当に楽しそうだから。
だから、今はまだ。
聞いてはいけないんだろうと私は思うことにした。
「菜々美、これは何ぞ」
そう聞いてくる彼に、私は我に返る。
モールの中をゆったりと闊歩する愁は、どこからどう見ても人間だった。