ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
すっかり現代日本の生活に慣れた愁は、日中は狐(猫と言ったら小突かれた)の姿で散歩に行ったり家の中で本を読んだりとニートさながらの生活をしている。
そのせいか、拾った当初はやせ細っていたけど今は幾分健康的だ。
(…あれだけ食べて太る様子がないのがすごいわ)
そんなことを考えながらスーツを脱ぎ、ハンガーに掛けていく。
ワイシャツの上からパーカーを羽織りジーンズをはいたところで、ふと部屋の中を何かが通ったような気がした。
(…?)
振り返っても誰もいない。
「―――貴様、何者だ」