ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-





突然耳元で聞こえる聞き覚えのない声。
それに肩を強ばらせると、声はさらにこう言った。



「返答によってはこの場で貴様を殺す。………何故あの方と一緒にいる」


喉元には刃物を当てられ、低い声でそう問われてもこの状態では声なんて出なくて。



「ぁ………う、ぁ」


「早く話せ。それとも死にたいのか?」


その言葉に首を弱々しく振る。動いたら刃物で首の皮が切れてしまったみたいで、ジワリと熱をもっていく。


(―――どうしよ、)


涙がにじんできてもう何も考えられなかった、そのときだった。





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