ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
その次の瞬間私の背後から人の気配が消え、代わりに茶色が目に飛び込んできた。
―――茶色の着流しを着ている愁の腕の中にいる。
それに気づいた私は一気に頬を赤らめ、慌てるものの愁の腕はびくともしなかった。
「な、………愁様、一体」
「よく見ろ馬鹿者。こやつが我らと同じに見えるか?」
その言葉に私は弾かれたように愁の顔と部屋の端に転がっている男の顔を交互に見た。
愁とは違って黒髪だけど、瞳の色は暗闇の中でも見違えようのない黄金色。
「菜々美もわかったか?こやつも我と同類、妖弧よ」