ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
―――今はコトコトと鍋が煮えていく音と、リビングから聞こえる愁の声だけが聞こえている。
どうやら愁はさっきの、………燈と呼ばれていた男の人に説教をしているらしい。
「あのー、…ご飯できたんだけど」
そうリビングに向けて話しかけると、愁は素早くこちらを向いた。
「そうか。…ならぬしへの説教はこんなものにしておこう。菜々美、早よう持って参れ」
「何言ってるの手伝いなさい!」
私がそう怒鳴ると、愁はしぶしぶ立ち上がって炊飯器から炊き立てのご飯を茶碗に盛り始める。
リビングにいる燈さんはその様子を呆気にとられたような表情で眺めていた。