ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-





「―――して、何者ぞ」


夕食後、菜々美がお風呂に入っているときだった。
愁が燈にそう訊ねると、燈は真剣な顔で答える。



「…梗(きょう)殿の配下の者共かと」


「なるほど。………気づかれたのであろうな、我がこちらにおることが」


愁が感情を込めない口調でそうつぶやくと、燈は同調するように頷く。



「明日より私が菜々美様の往来の警護を致します」


「うむ。―――しかし梗め、いよいよ我を亡き者にすべく動き出したか…」


そうつぶやく愁の表情は、最近菜々美に見せるようなそれとは異なる。
その瞳は、妖弧の本性を垣間見せるような冷たい光を放っていた。





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