ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
その言葉を口走った瞬間愁をまとう空気が変わった。
気を緩めていたら立っていられなくなるくらいの鋭い空気に、私の心拍数は上がっていく。
これが、妖弧――…?
「瞳の色が他と異なる妖弧は、他の者とは比べ物にならないくらいの力を持って生まれる。故に、里の均衡を保つべくその場で殺されるのが定めよ。ただ、我は………」
話しながらだんだんと元の愁に戻っていく。
動けない私の元まで歩いてくると、愁は私の頬を撫でた。
「………生かされた我に近づくものなどおらなんだ。ぬしが初めてよ、…菜々美が」
青紫の瞳が揺れている。
私がその瞳に手を伸ばそうとした、そのときだった。