ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-





「―――菜々美様!」










焦ったような燈の声。


首元に走った小さな痛み。


霞んでいく、愁の姿。




(…何、これ)


あっという間に身体の自由が奪われて、私は倒れていく。



「………菜々美!」


何も見えない、聞こえない。
初めて聞く焦ったような声で私を呼ぶ愁でさえ、私の耳には届いてこなかった。





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