ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-





静寂が戻ったリビングで、愁は菜々美を担ぎ上げたまま何か考えているようだった。



「…いかがなさいます、愁様」


そう声をかけたのは燈。
その間にも菜々美の息は荒くなり、毒に身体が犯され始まっているのが見てとれる。


(………仕方、あるまい)



「里に戻るぞ。―――菜々美を連れて」


「かしこまりました。しかし愁様、一つ確認を。…菜々美様をどうされるおつもりか」






「助ける。…我を、我の心を余さず拾い上げた女を我は失いたくない」





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