ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
(斯様なときが来ようとは…)
そう考えても、もう遅いのかもしれない。
…菜々美に拾われた瞬間決まっていたのだ。我が菜々美を―――人間をこちらの諍いに巻き込むことを、いつかこんな日が来ることを。
「愁様、変わられましたな。菜々美様のおかげでしょうか」
「知らぬな」
その答えに小さく笑った燈はそのまま姿を消した。
―――それでも、そうであったとしても。
「我はぬしのそばにいたい」
燈の消えたリビングにぽつりと浮かんだ言葉は、今の菜々美には届かない。愁は菜々美を抱え直すと、ゆっくりその場をあとにするのだった。