ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
「………ようやっと目覚めよったか。菜々美、気分はどうだ?」
すだれが動く音がして、そちらに視線をやると愁が部屋に入ってくるところだった。
「愁!…ここ、どこ?」
「相変わらず威勢がよいやつよの。ここは我の屋敷ぞ」
私はその言葉にしばし考えた。
「…屋敷?愁、家あったんじゃない」
「阿呆。この屋敷は里の中、………ここは我の住処、妖弧の里ぞ」
そう言いながら私のそばに胡座をかいて座る愁に、私は目をぱちぱちさせるばかり。
「……………よ、妖弧の里!?」