ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
道路の端を、タクシーの中で見た猫が今にも倒れそうにふらふらと歩いている。
その姿に私は思わず駆け寄って、自分が濡れるのもかまわずに抱き上げた。
「冷え切ってる…早く暖めないと」
そうつぶやくと、猫を抱き上げたまま早足で家に戻った。
別に放っておくこともできた、でも。
なんだかこの猫が今の自分の姿に重なる気がしたらもう放っておけなくて。
「―――わ、ちょっ!」
しかし、抱き締めたまま家の中に入ろうとすると、猫は腕の中で暴れ出す。
思わず落としてしまいそうになったのを必死で抑えて、私は猫を目をじっと見入った。