ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
『………ハジメマシテ、愁兄様』
絶命した母上を見下ろしながらそう言う少年が我が弟だなどと、我にはにわかに信じることができなかった。
しかしどことなく父上や我と似通った顔立ちに、信じざるを得ない気分になる。
血に染まる母上の身体。血の気の引いた我の身体。
立っていることなどできなかった。
『―――なぜ…』
母上の亡骸を抱きかかえながら我がそうつぶやくと梗は狂ったように笑った。
『僕が次期頭領になるためですよ。僕は我が母の命を懸けた願いを叶えるんです。兄様の大切なものを全部壊して、ね?』
『……………ふざけるな!!』