ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
そこまで話すと、愁はゆっくり私から離れていった。
…二人の間にできた距離がやけに遠い気がして。
体温を感じれなくなったのならせめて顔を見たくて、私は顔を上げた。
すると、愁と視線がぶつかる。
私の視線の先には愁を苦しめたその青紫色の瞳があって、そこに今映るのは私だけ。
…ずっとそうであればいいのに。
私だけ見つめてよ。
私の好きなその瞳で。
「…我は我の大事なものを傷つけた梗を許さぬ。そのためにここに戻ったのよ」
その一言に秘められた言葉の重みに私は思わず息を呑んだ。