ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
その言葉の本意を確かめようと私は口を開こうとする。
…でも、聞けない。
(遠い)
距離だけじゃない。
私と愁には、絶対に縮まらない“何か”があって。
「菜々美、どうした…?」
それでもそばにいたいと思う気持ちがあって。
でも、私にできることなんか何も思いつかない。
「…愁」
こんな気持ち、知らない。
名前を呼ぶだけで苦しい。
どうして泣いてるのかもわからないまま、私は涙を止められなかった。