ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-





(キ、キス!今私、キスした!?)


顔を真っ赤にしてうろたえていると、愁はそんな私を見て笑っている。



「な、何してるのよ!?」


「ぬしが存外可愛らしいことを言うものでな、我慢できなくなったのよ。…余計な心配などするな、我は死なぬ」


そう言うと愁は私の左手を取って、自分の懐から取り出した指輪を薬指にはめる。



「ぬしを帰すつもりはない。故に、ここにいる間はこの指輪を肌身離さず身に付けておけ。…我がぬしを守る」


私の目をじっと見て愁はそう言った。


まるで誓いの言葉のようなそれに私の身体は茹で上がったみたいに真っ赤になって、心臓はうるさく騒ぎ続ける。
その間、柔らかな日差しが青紫色の指輪を照らして綺麗に光っていた。





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