ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
「座ってよ。で、できたら私の話を聞いて」
「…かしこまりました」
私の言葉に燈は静かに腰を下ろす。といっても私たちの間には一人分の距離があって、その隙間を少し冷たい風が抜けていった。
「………燈は、愁の瞳の色どう思ってる?」
燈の顔を見ながらそう訊ねた私に、燈は穏やかに笑ってみせる。
私が言いたいこともお見通しだと言わんばかりの表情に私の方が恥ずかしくなってしまった。
(聞かないほうよかったかな)
「愁様に初めて出会ったとき、あの方は今よりずっと冷たい瞳をしておられました。…誰にも笑わず、必要以外に口を開くこともなく、文字通り氷のような方でした」